以前から、歯周病と認知症には強い関連があることが指摘されていましたが、九州大学の研究によって、その事実がより明確になりつつあります。
そこで今回は、歯周病が及ぼす認知症への影響をわかりやすく解説します。

1 認知症とは?

認知症とは、何らかの理由で脳細胞が死滅し、記憶や認知行動に異常が現れる病気です。
ご高齢の方がかかりやすい病気ですが、「若年性認知症」という病名があるように、65歳未満の人でも発症することがあります。
そんな認知症は、いくつかのタイプに分けられますが、ここではよく耳にする「アルツハイマー型認知症」の特徴や歯周病との関連を説明します。

2 アルツハイマー型認知症の特徴

認知症といえば「アルツハイマー型認知症」をまず思い浮かべるのではないでしょうか?

脳に「アミロイドβ(ベータ)」と呼ばれるたんぱく質が蓄積することで脳細胞が死に、記憶障害である“もの忘れ”などの症状が現れます。
実は、健常な人でもこのアミロイドβという物質は日々産生されているのですが、分解・排泄によって体内に蓄積することはほとんどありません。

認知症を発症する人は、そうしたアミロイドβの代謝が正常に行われなくなっているといえます。

3 歯周病菌がアミロイドβの産生を促す

九州大学の研究では、実験用マウスに歯周病菌を感染させて、アミロイドβの産生量がどのように変化するのかを調べました。
その結果、歯周病菌に感染させていないマウスと比較して、アミロイドβの産生量が10倍程度まで増加したことがわかったのです。
これと同じ現象がヒトの身体でも起こるとは断言できませんが、歯周病と認知症には強い関連性が認められる点は確かといえます。

4 噛めないことが脳にとってよくない

日本人が歯を失う原因の第一位は歯周病です。
歯を失うと、そしゃく能率が低下し、軟らかいものしか噛めなくなってしまいます。
その結果、脳に伝わる刺激が少なくなり、認知症のリスクを高めるともいわれています。

つまり、歯周病が認知症に及ぼす影響というのは、タンパク質の異常な蓄積だけにとどまらないのです。
それだけに、認知症のリスクを少しでも減らすためには、歯周病も積極的に予防していくことが大事になってくるのです。

▼まとめ

歯周病はいくつかの点で認知症との関連が認められます。さらに、歯周病が重症化すると、脳梗塞や心筋梗塞、誤嚥性肺炎のリスクを高めることもわかっています。
歯周病が大きな病気や認知症との関係が深いことは間違いがないでしょう。

今や日本の成人のうち約80%がかかっているといわれる歯周病。
国民病ともいわれている歯周病ですが、早期発見・早期治療、あるいは予防が何より重要な口腔疾患といえます。