病気には、親から遺伝するものがあります。
では、最もポピュラーな口腔疾患である「むし歯」は、果たして遺伝するものなのでしょうか?

1 むし歯のリスクについて

むし歯が遺伝する病気かどうかは、むし歯のリスク因子を考えることで、自ずと答えが出てきます。

むし歯に関しては、カイスという研究者がむし歯にかかる因子として次の3つを挙げました。
1.歯質
2.細菌
3.食べ物(糖分)
この3つの要因が全て重なり合なりあったときに起こることを提唱しました。
むし歯はこれら3つの要素に「時間」が加わることで発症する病気です。
1の歯質以外は環境的な要因に分類されます。

例えば、甘いものを食べる頻度や回数は、その人の食習慣や家庭環境によって左右されますよね。
また、お口の中が汚れている時間や細菌の数は、オーラルケアの習慣で決まってきます。
一方、歯質に関しては、遺伝と環境の両方が関与しているといえます。

2 歯質は親から遺伝する?

私たちの歯は、一番外側にエナメル質、そのすぐ下に象牙質が存在しており、その構造はみんなに共通しています。
ただ、歯質の成熟度や厚みなどは、ある程度、遺伝的要因が絡んでいるといるのです。
そういう意味で、むし歯のリスクは遺伝することもある、と結論付けることができます。

とはいえ、そうした遺伝による歯の性質も、適切なケアを施すことで改善することが可能といえます。

3 歯質を強化する予防処置

生まれ持って歯の成熟度が低いのであれば、フッ素塗布を受けて、歯質の強化がはかれます。
フッ素は歯の再石灰化を促すだけではなく、「フルオロアパタイト」と呼ばれる特別な構造に作り変えることで、酸への抵抗性が高まります。
その結果、むし歯菌に負けない強い歯を作ることができるのです。

4 唾液の分泌量について

遺伝に関わるむし歯のリスクとしては、もうひとつ「唾液腺の機能」が挙げられます。
遺伝によって唾液腺の機能が低下していると、お口の中が感染しやすくなります。(ドライマウス)
乾燥した口腔環境では、細菌が繁殖しやすく、むし歯のリスクも上昇します。
そういったケースでは、唾液腺のマッサージなどを行うことで、ドライマウスの症状を改善できます。

▼まとめ

このように、むし歯というのは一見すると遺伝とは無関係の病気に思えますが、いくつかの点で関連が認められます。
ですから、むし歯予防をする上では、環境的な要因だけではなく、遺伝的要因についても考える必要があるといえます。