虫歯は、酸によって歯質が溶かされている病気です。
放置していると、最終的には歯の神経まで侵され、歯がボロボロになってしまう場合も珍しくありません。
そんな虫歯の症状は、エナメル質と象牙質で違いがあるのをご存知でしょうか?

1 エナメル質は人体で最も硬い組織

エナメル質は、ハイドロキシアパタイトと呼ばれる物質から構成される、人体で最も硬い組織です。
虫歯治療で歯を削る際、ダイヤモンドがまぶされたバーを使用する必要があります。
スチール製のものではバーの方が破損してしまうくらい硬い性質を帯びています。

そんな固いエナメル質ですが、「酸」に対してはとても弱い傾向にあります。
ちなみに、象牙質も似たような構造を呈していますが、有機物が多く含まれており、エナメル質よりも軟らかく、酸に対してさらに弱い傾向にあります。

2 エナメル質の虫歯は痛くない

エナメル質の虫歯では、痛みを感じることがありません。
なぜなら、エナメル質の中には神経細胞が分布していないからです。
つまり、虫歯で痛みを感じた時点で、それは象牙質にまで及んでいると考えることができるのです。
一方、象牙質の奥深くには少しだけ神経が入り込んでおり、虫歯になると冷たいものや甘いものがしみたり、歯痛を感じたりするようになります。

3 黒くなるのは象牙質の虫歯

虫歯になると、「歯の黒ずみ」という特徴的な症状が現れますが、これは基本的に象牙質の虫歯に限られます。
象牙質には比較的多くの有機質が含まれており、虫歯になることで軟化するのです。
そこに着色性の物質なども沈着し、黒ずみという症状が現れます。
一方、エナメル質は97%がハイドロキシアパタイトで構成されているので、虫歯になっても軟化することはなく、黒ずみも生じにくい傾向にあります。

4 白濁するのはエナメル質の虫歯

エナメル質の虫歯は、黒ずみが生じにくいのですが「白濁(はくだく)」という症状は現れやすいです。
これは初期の虫歯に生じる症状で、専門用語で「表層下脱灰(ひょうそうかだっかい)」といいます。

歯の内部から脱灰が始まることで、表面が白く濁ったように見えるのです。
この時点ではまだ歯質に穴は開いておらず、フッ素塗布などで再石灰化を促せば、虫歯の進行を止めることが可能です。
一方、象牙質では、こうした現象が起こる前に、歯質が溶けていきます。

▼まとめ

このように、エナメル質と象牙質では、虫歯の症状が異なるため、患者さんご自身でも大まかな進行度を把握することはできるかと思います。
とはいえ、虫歯が生じている以上、歯科治療は欠かせませんので、異常が認められた時点で当院までご連絡ください。
それぞれの状態に応じた最適な治療法をご提案いたします。