歯周病によって全身のいろいろな病気のリスクが高まることがだんだんと明らかになってきていますが、最近ではアルツハイマー型認知症との関連性が指摘され始めてきています。

アルツハイマー型認知症とはどのような病気か、そして歯周病がアルツハイマーを引き起こすメカニズムについて見ていきましょう。

アルツハイマー型認知症患者はだんだん増えている

現在およそ500万人とされている認知症患者の7割は、アルツハイマー型認知症だと言われています。

そして高齢化社会に伴い、2025年には認知症患者は700万人を超えると推定されており、増加の一途をたどることが予測されます。

これはつまり65歳以上の5人に1人が認知症になる、ということを表しています。

アルツハイマー型認知症になるとどんな症状が出る?

認知症の大半を占めるアルツハイマー型認知症の症状の特徴としては

  1. 直前の記憶がなくなる
  2. 時間や場所がわからなくなる
  3. 言語障害が起きる
  4. 人の顔やものの判別ができなくなる
  5. 仕事や家事が困難になる
  6. 食事や入浴、着替えなどの日常生活がおぼつかなくなる

などが挙げられます。

そしてその後やがて寝たきりの状態となり、10年ほどで死に至るとされています。

歯周病がアルツハイマーを起こすメカニズム

最近の研究でわかったことは、歯周病の原因菌が作り出す「酪酸」という物質が血管を通じて脳内に取り込まれると、アルツハイマー病を引き起こす原因になりうる、ということです。

これは、2017年5月12日に、日本大学歯学部の研究チームが日本歯周病学会で、歯周病とアルツハイマーとの関連性について、ラットを使った研究で証明したものです。

この研究チームは、ラットの歯茎に酪酸を注射し、その後、脳のあらゆる部位での酪酸の濃度を計測しました。

その結果、脳のあらゆる部分で、酪酸による酸化ダメージが確認されました。その中でもとりわけ、記憶を司る「海馬」でのダメージが大きく、このことがアルツハイマーとの関連性が高いことを示唆しています。

歯周病にかかっている患者さんの歯周ポケットからは、歯茎が健康な人に比べ10倍から20倍もの酪酸が検出される、という事実があります。

そのため、歯周病にかかっている部分を長期間、治療せずに放置していると、歯周病にかかっている部分で作られた酪酸が脳に運ばれ、アルツハイマーを引き起こす原因となる可能性があるので注意が必要です。