ヒトの歯というのは、虫歯菌に溶かされたり、歯科治療で削ったりすると、もう二度と元には戻らない組織として有名です。
それだけに、できるだけ虫歯にかからないことが大切なのですが、実は象牙質に関しては再生することがあるのをご存知でしょうか?

1 歯を構成するのはエナメル質と象牙質

私たちの歯は、一番外側をエナメル質、そのすぐ下に象牙質が存在しています。
歯というのは基本的にこの2つよって構成されているものとお考えください。

そして、何らかの理由で損傷した場合、全く再生されることがないのは「エナメル質」だけといえるのです。
人体で最も硬く、半透明な美しいこの組織は、一度失ってしまうと元には戻らないのです。

一方、象牙質は少し違います。

2 象牙質は歯が生えたあとも作られる

象牙質は、細かく3つに分けることができます。

1つは歯が生えた時に存在しているもので、これを専門的には「第一象牙質」といいます。

次に、年をとるに伴い増えていくものを「第二象牙質」といいます。
第二象牙質の添加は誰にでも起こる生理的なもので、基本的に歯の神経や血管が収まっている歯髄腔(しずいくう)の中に生じます。

ですから、歯の外側に作られていって、歯がどんどん大きくなったり、歯の形が変わったりすることはありませんのでご安心ください。

そしてもう1つ、歯の健康を考える上で重要な象牙質があります。
それは「第三象牙質」あるいは「修復象牙質」とも呼ばれるものです。

3 歯の修復のために作られる象牙質

修復象牙質とは、その名の通り歯の修復ために作られるものです。
具体的には、虫歯や外傷、摩耗などによってダメージを受けた場所に新しい象牙質が作られます。

これを歯質の再生といっても、あながち間違いではないのです。

もちろん、手足を擦りむいたり、切ったりした際に上皮がきれいに再生する現象とは異なりますが、傷口を治す、あるいは守るという意味では、歯にも再生機能が備わっているとも考えられるのです。

4 初期の虫歯は再石灰化によって治せる?

まだ発生して間もない虫歯は、フッ素を塗布するなどして再石灰化を促せば、その進行を止めることもできます。

これはエナメル質で起こることなので、ある意味エナメル質にも再生機構が備わっているといえるかもしれませんね。

ですから、少しでも歯に異常が認められたら、できるだけ早く歯科を受診するようにしてください。

本当は、定期的に検診を受けて虫歯のごく初期段階に発見することが重要です。
ごく初期なら再石灰化を促して削らなくても治せる可能性があります。

まとめ

このように、歯質というのは再生機能が一切備わっていないように思われがちですが、実際はそうではありません。

歯科治療というのは、そうした歯の再生機能を活用しつつ行っていくものなのです。

いつまでもご自身の歯で、おいしい食事を楽しむことは生涯にわたって大きな喜びになります。
その実現には定期的な歯科検診が非常に大切な行動になります。