歯は、一度失うと、もう二度と元には戻りません。

それは摩耗したり、虫歯によって溶かされたりした歯質に関しても同じことがいえます。それだけに、歯の詰め物や被せ物、それからインプラントやブリッジのような補綴物が開発されたのです。

けれども実は、エナメル質に関しては、再生することがあるのをご存知でしょうか。ここではそんなエナメル質の修復メカニズムについて詳しくご紹介します。

1 エナメル質は「酸」に弱い

虫歯を発症すると、まずは歯の再表面にあるエナメル質が溶かされていきます。

人体で最も硬く、削るときはダイヤモンドバーを使う必要がある組織ですが「酸」に対しては非常に弱い性質を持っています。

そのため、虫歯菌が産生する酸だけでなく、お酢や炭酸飲料など、酸性の高い食品を口に含んでいるだけでも、エナメル質は溶けていきます。

この現象を「脱灰(だっかい)」といいます。

つまり、私たちの歯は、虫歯にかかっていなくても普段の食事によって日常的に溶かされているのです。

2 唾液は歯の修復材料

毎回、食事をする度に歯が溶かされていたら、私たちの歯はあっという間になくなってしまいますよね。

けれども、現実はそうではありません。

なぜなら、唾液によって溶けた歯を修復する材料が含まれているからです。

唾液には、溶け出したカルシウムイオンやリン酸イオンを、再び歯に戻して結晶化し、修復する働きがあります。

これを「再石灰化」といいます。

このサイクルが繰り返されることで、歯は正常な状態を保っているのです。

3 フッ素が歯を強くする理由

フッ素は、市販の歯磨き粉に配合されていたり、歯科医院の予防処置で歯面に塗布されたりと、いろいろな場面で活用されています。

その度に「歯質を強化する」という言葉を耳にするかと思いますが、具体的な理由についてはそこまで語られませんよね。

実はこのフッ素、歯の修復材料であるリンやカルシウムを引き寄せやすい性質を持っているのです。

これはまさに「再石灰化」現象ですね。

しかも、エナメル質に取り込まれた際には、フッ素が加わることで、歯質そのものが「ハイドロキシアパタイト」から「フルオロアパタイト」という別の物質に変化します。

このフルオロアパタイトという物質によって再生されたエナメル質は、酸性刺激への抵抗性が高まるため、結果的に「歯質が強化」されるのです。

まとめ

このように、歯は酸によって溶かされても、許容範囲であれば再石灰化によって修復されます。

そこで重要となるのが、天然の再生材料である唾液と、歯質を強化するフッ素です。

これらに注目しながらセルフケアを行うことで、予防効果は各段に上がります。