歯周病を発症されている患者さんは、お口の中から必ず歯周病菌が検出されます。それも1種類ではなく、複数の歯周病菌が生息しているのが一般的です。その中でも特に気を付けなければならないのが「レッドコンプレックス」と呼ばれる細菌群です。

今回はそんな歯周病の原因となるレッドコンプレックスについて解説します。

1 歯周病菌は口腔内で「細菌叢(さいきんそう)」を形成している

冒頭でもお話しした通り、お口の中に生息している歯周病菌は1種類ではなく、いろいろな種類の細菌が集合することで「マイクロビオーム(細菌叢)」を形成しています。

そのため、口腔内に見えている歯肉縁上歯石と、ポケットの中深くに形成されている歯肉縁下歯石では、定着している細菌の種類が大きく異なるのです。

ちなみに、病原性の高い歯周病菌というは、深いポケット内に形成された歯石を繁殖の場としています。その中でも最も危険な菌の代表がレッドコンプレックスです。

2 レッドコンプレックスとはなに?

Red Complex(レッドコンプレックス)は、全部で3種類の歯周病菌によって構成されています。

具体的には、「Porphyromonas gingivalis」(P.g菌)、「Treponema denticola」「Tannerella forsythensis」の3つです。

これらは、マイクロビオーム(常在菌からなる細菌叢)の頂点に立つ細菌群で、歯周病が重症化したヒトのお口の中で検出されやすくなっています。

そのため、重度の歯周病による症状は、主にこれらの細菌が担っているといえるのです。

3 悪臭を放ち、骨を溶かすのはP.g菌の仕業

P.g菌(Porphyromonas gingivalis)は、歯周病菌の代名詞ともいえる細菌です。

生命活動を営むにあたり、「メチルメルカプタン」と呼ばれる揮発性のガスを産生するのが特徴です。

このガスは「腐った玉ねぎのようなニオイ」がすることから、歯周病による口臭の主な原因は、P.g菌であるといえます。

さらに、P.g菌は歯槽骨を溶かす特殊な毒素を産生することから、歯周病によって「顎の骨が溶ける」という重篤な症状もこの細菌が担っているといえるのです。

4 深い歯周ポケットを作らないことが大切

レッドコンプレックスは、酸素の少ない環境を好みます。

歯周病によってできる「深い歯周ポケット」というのが、正にそれですね。

お口の衛生状態が良かったり、歯周病の症状をしっかり管理できていたりすると、ポケットの深さも改善できることから、レッドコンプレックスが住みにくい環境を作ることができます。

そのためには、日々のオーラルケアを徹底するだけでなく、歯科医院でのプロフェッショナルケアを受けることが大切になるのです。

▼まとめ

このように、レッドコンプレックスというのは、歯周病が進行した段階で増え始め、症状のさらなる悪化を招く怖い細菌群です。

それだけに、レッドコンプレックスが形成されないような衛生環境を保ち続けることがなにより大切です。